ピーターパンの恋



SPACE TOYOにて片岡監督の3作品上映。ラブコメX(2004年、100分)は、イマドキ若者の心の揺れを刻銘に表現した映画。撮影現場では、シナリオの詳細はなく、設定の中で演者が役になり気って自分の言葉でセリフしたという。そのため日常生活を切り取ったようなリアリティが出た。何よりどの役者さんも自然で魅力的。自主映画ならではの型にはまらない自由さが楽しい。キーワードは「ピーターパン」。企画制作Dio Apos。DVD販売(500円)も行っている。問い合わせは、dioapos@softbank.ne.jp(片岡けんいち)まで。

陽気なアメリカ的独善



昨日、渋谷アップリンクの「未公開映画祭」にて、「ジーザス・キャンプ」を鑑賞。キリスト教原理主義の福音派の教育現場を垣間見る。同派は保守の右派で、ブッシュ(当時)の共和党を支持し、全米1/4の人口の勢力で政権に強い影響を及ぼしている。そのサマーキャプは、子供への洗脳風景ともいえるが、親も同伴し、しごく楽しい。講義ではおもちゃやダンスを多用し、飽きさせない。子供たちは「神」に出合い、歓喜の涙を流す。ある時、左派のラジオDJが、フィッシャー女史に「あなた方は子供たちに、信仰の選択権を与えてない」と批判すると、女史は「選択の必要はない。なぜなら正しいことだから」と。確かに文化とは生誕地に左右される選択の余地のないものかもしれない。福音派の問題は、他宗派や意見の違う者への不寛容である。しかし、正しき道と信じてつき進む女史や子供たちの自信満々さは、まさにアメリカ的だと思ってしまう。

筋肉増強な国の闇

 

「ステロイド合衆国」は傑作ドキュメンタリー。アメリカではスポーツ界で、ステロイド(筋肉増強剤)の使用が問題視。特にシュワルツネッカーやハルク・ホーガン、スタローンらの使用の告白は、クリス監督ら多くのアメリカ男を幻滅させた。彼らにとってこのスターたちは努力してマッチョな体を手にした成功者のシンボルだったからだ。監督の兄弟は、今も夢を追う中年スポーツマン。その家族の物語と、スポーツ選手、学者などのインタビューが、アメリカ人の心のあり方を浮かび上がらせる。また、体に害悪と叫ばれるステロイドは、意外とビタミン剤より死亡率が低いことも分かる。問題は、異様なほどの筋肉嗜好、つまり「力」の信仰なのだ。正義の戦争をやる気分を醸成しているような。

大和魂持ったアメリカ兵

 

渋谷のアップリンクにて「442日系部隊」(すずきじゅんいち監督、2010年)を見る。第二次世界大戦下、日系アメリカ人は、「敵国人」として強制収容所に入れられた。日系の志願兵は、そうした人種差別を跳ね返すため、アメリカ軍として奮闘する。当初蔑まされれつつも、勇敢さ、勤勉さで花々しい戦績を上げる。そして今も、アメリカ内のみならず、ヨーロッパ内でも「解放軍」として442部隊は尊敬されている。この部隊は、人種差別の意識を変える一つの事件でもあった。ただ、大和魂を発揮する日系部隊の敵が、まさに日本であったことに、この映画が取り上げる歴史の矛盾を想う。

人間賛歌のAVをつくった男

 

アップリンクで、「YOYOCHU SEXと代々木忠の世界」を見る。「ヨヨチュウ」こと代々木監督は、AV界の巨匠。愛染恭子の本番シリーズや「ザ・オナニー」シリーズなど、従来のエロ映画の"筋書き"を壊した性本来を露出した映像で、世に衝撃を与える。女優との面接の長さは定評で、その人のバッググランドを理解して作品づくりを行う。過激な性表現に、フェミニストの批判を受けると、「代々木忠を囲む女性たちの集い」の会を定期的に開催し、性について語り合う。仕事の企画で出会った多重人格者の女性30人の相談を引き受け、うつ状態になったことも。元極道の生一本と優しさが交錯する、魅力ある人なりと人生が浮き出る名作。「性」を通した人間賛歌。

5億人の友人も、孤独を癒さない

 

渋谷シネパレスで話題の映画「the social network」を見る。世界最年少の富豪で、「フェイスブック」の創設者マーク・ザッカーバーグの実話。「フェイスブック」とは、ネット上に自分の実名と顔写真、プロフィールを公表し、紹介で友人を増やしていくというもの。ハーバード大生のマークは、天才プログラマーで、ガールフレンドにふられ酔った勢いでつくったサイトが2時間で2万アクセス。その後、ネットのハーバードコネクションをかすめ取り、フェイスブックを創設。映画は、共同事業者の友人とハーバード大の若者が訴える裁判の進行を元に展開していく。「会話のアクション」のようでスリリング。マークにとって裏切りも失恋も意図したことではない。いいも悪いも突き抜けて「フェイスブック」にのめっていくマークの情念が圧巻。その奥に、ただ人とつながりたい孤独な男がいる。オーソン・ウェルズ「市民ケーン」の21世紀版。

「イスラエル」見据える眼力

 

アテネ・フランセ文化センターにて、アモス・ギダイ監督の「フィールド・ダイアリー」を見る。映画冒頭から、イスラム兵士がカメラを手で覆って撮影拒否。その手の影にタイトルを入れるふてぶてしさ! 撮ってはならないイスラエル占領地の兵士や、抑圧されるパレスチナ人に、ぐいとカメラを向け、えんえんとインタビュー。あまりにひつこく回すので、銃を持った兵士が怒り出し、見る方がはらはらする。アモス監督のガツチリ対象を見つめ、一歩も引かない姿勢に作家根性を感じる。戦闘シーンはない。カメラに挑発されて話し始める人々の声、表情こそが、占領地の現実をリアルにさらす。

戸塚ヨットスクール校長の箴言

 

ポレポレ東中野にて斉藤潤一監督の「平成ジレンマ」見る。訓練生の死亡や行方不明事件を起こした戸塚ヨットスクール事件から30年の今を記録したものだ。校長の戸塚宏は最高裁で6年の懲役が確定し、2006年に刑期を満了、現在またあのスクールに復帰。また学校関係者や保護者に呼ばれ、年70回の講演をこなしてもいる。映画冒頭、その壇上で自身満々に言う。「体罰は進歩を目的とした有形力の行使だ。人格ができてないから体罰して人格をつくってやるんですよ」と。ゆらぎないことに驚く。正直反感も覚える。しかし映画を見進めるうちに、映画監督の戸塚に対するシンパシーがいつの間にかこちらに伝染していく。その過程を以後数枚で考察したい。

10万年後の安全、なんて…

 

渋谷のアップリンクで「100,000年後の安全」を見る。プロジェクト名「オンカロ」はフィンランド語で「隠れた場所」。原子力発電所で使用したウラン燃料を捨てるゴミ捨て場の話である。世界で最初の建設事業だ。完成するのは100年後! 原発反対賛成の議論の前に、日々、世界中に放射性廃棄物が雪だるま式に増え、安全に捨てられてない現状を改めて認識。フィンランドのみ真面目に取り組んだわけだ。映画の中でのプロジェクト関係者の議論は本当に驚く。10万年先の人類を見越しての安全性を、真剣に考えようとする。しかし、結論は当然「予測不能」だ。人類自体変わっているだろうし(存続しているかどうか)、10万年残る施設なんて人類史上存在しない。もうこれは「哲学的事業」だ。原発問題とは、実にとほうもない。

夢は人生より破壊的?



ヤン・シュバンクマイエル監督は、シュルレアリスム(超現実主義)の道を貫く、チェコのアニメーター。現在77歳だが恐ろしく精力的。渋谷のイメージメフォーラムで見た新作『サヴァイヴィングライフ−夢は第二の人生−』は、実写とアニメが混在する独特の映像。物語は、中年男が、夢の中の美女と恋に落ち、子供までつくる。彼女は何者か。フロイト流の夢分析ではエディプスコンプレックスに出てくる「母」であり、ユング流では「アニマ」(男性が抱く女性の理想像)。劇中、額のフロイトとユングは殴り合って自説を譲らなかったが、監督は、その二つの学説を強烈にパロテダィー化し、超えてしまった。題名は「夢を見ることが人生の支えになる」というメッセージが込められているという。しかし結末は、主人公にとって破壊的。でも甘美。むしろ夢の方が本物で、人生はその表層にすぎないのかも、とも思う。この映画の雰囲気をお伝えしたいので、以下の予告映像をどうぞ。http://survivinglife.jp

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