アメリカ、生きた「自由論」
フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー映画を
7時間見る。
終盤になるとかなりきつくなったが、
見終わって充実感あり。
うち一本の『州議会』は、
アメリカ・アイダホ州の州議会議事堂で行われた
数々の州議会の記録である。
ここでは議員のほとんどが一般市民から選出され、
会期3カ月のみ議員として活動し、任期は2年。
「市民政治家」なわけだが、
戦わす議論の中身が結構ハイレベルなのだ。
個々人が自分の言葉で、また、
その発言に責任を持って自説をとうとうと述べていく。
起承転結はっきりし、単刀直入、率直で、
警句や引用でしめてなかなか聞かせる。
賛成反対にしても、その理由に納得がいく。
気持ちがいい議論である。
アメリカの地方政治って、案外魅力的だなと思う。
根回し寝技、阿吽の呼吸、空気読みで決まっていく
日本人の議論のやり方や、ものごとの決め方は、
つくづくヤダなと思う。
州議会での賛成反対の分かれ目は、
行政が市民社会にどれだけ介入するか、である。
介入の理由は、市民の自由を守るかいなか、につきる。
例えば、喫煙の取り締まりの議題。
喫煙は体に悪い。これはどうやら事実。
前提をまずはみんなで共有。
そこから議論は始まる。
反対派は言う、
しかし、行政が規制するのは、個人の自由への侵害」。
賛成派は、「喫煙する傍の人の健康を、煙の害から
守ることは、行政の仕事」という具合だ。
業界団体の法制定の要望も、
この観点から、公明正大に議論される。
議論がこんがらがっていくと、
「アメリカの自由とは」という根本的な理念に
立ち返って議論されるのもすごいなと思う。
権利の章典やら建国の理念やら、
モンテスキューやらが、議論の場、
政治の現場で確認される!
中央政府の動きだけを追う報道にないことを
たくさん知って、アメリカを見直す。
ただ、ワイズマンは、アメリカ資本主義社会の
暗部も容赦なく描くが。
いざ、ワイズマン、7時間の旅へ
本日、アテネ・フランセ文化センターにて、
フレデリツク・ワイズマンのドキュメンタリーを見る予定。
見る、という意気込みを記す。
というのは、2本で7時間近くあるからだ。
集中力が続くか心もとないが…。
見たいのは
『州議会』『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』。
前者は地方行政、後者は167言語が話される超多国籍エリアの
ドキュメントとなる。
具体的事実で、この複雑な構成物を
どう立体的に描き上げているのか、とても関心がある。
自分の住んでる足立区の区議会を描いてみたら
面白いのかな、とふと思う。
日本国内の多国籍エリアは、きまってライターが入って
ルポ本が出てるが、違う切り口もあるかもしれない。
ヒントをつかみに、
いざ、アテネへ。
共依存の悲劇
フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー映画
『DV ドメステック・バイオレンス』
『DV2 ドメステック・バイオレンス2』を見る。
どちらも3時間近くの長いもの。
アメリカのDVの実態を、なまなましく活写している。
前者は、フロリダ州にあるDV被害者保護施設の
被害女性たちを取材。
彼女たちは、この施設に入り、DVに陥るのは、
相手と共依存関係にはまるからと教えられ、気づく。
自分を喪失し、相手に支配される関係だが、
自身も相手も自身もよりどころにする「自己」がなく、
傷つけ傷つけられることで強く依存し合うということだ。
被害女性が、別れたDV夫のストーカー的電話を
恐怖しながらもとってしまうと話したとき、
「あなたは、まだ彼に関心がある」と
カウンセラーが指摘するなり、
その女性が混乱したのが印象的。
被害女性たちの子どもたちが、
DV現場を絵にする場面がいたいたしい。
『DV2』の舞台は法廷。
何組もの被害者と加害者が登場し、
生のドラマが展開されて、結構見てしまう。
痴話げんかのもつれ、大人になりきれない関係に、
「なさけない」と女性裁判官がため息をつくのがリアル。
驚くのは、夫婦喧嘩で手が出ても、
警察にしょっ引かれ、裁判ざたになることだ。
このへんはさすがアメリカ、徹底している。
男女の喧嘩でも、ときに銃が出てきて
たくさんの悲劇が起こっているからだろうが。
たこ焼き的真理
中身がトロッ、外はサクッの
たこ焼きをつくろうと、日々、悪銭苦闘している。
たこ焼きひっくり返し棒を両手に持つと、
妙に興奮して、やたら作成中のたこ焼をつついてしまう。
動画で見たたこ焼き屋のように、
クルリクルリとやりたく思うからだ。
なにせ家庭用の電熱器で熱するので
温度がいまいち上がらず、なかなか固まらない。
そこで中途半端にかたまりかけるものを、
グチャグチャとこね回すだけになる。
すねと中身は均一的にかたまり、
トロッ感が失われていく。
7回も焼いてみて、ついに分かった。
練粉を鉄板に入れて20分はいじらない。
外がしっかり「皮」となって、90度ひっくり返す。
そこであとの練粉をぜんぶ流す。
たこ焼きの輪郭を、確実につくっていこうと待つ
忍耐こそ必要である。
さらに20分待つ。
ここで、ひっくり返せるものだけつつく。
さらに20分待つ。
この頃、全たこ焼きの皮が硬くなる。
つついてクルクル回せるのは、この時以降。
つまり、60分は、じっと待たねばならない!
たこ焼き的真理を体得する。
ものごとは、時が満ちるまで、待たねばならない。
満たぬまま手を入れるのは、愚行である。
それは「過干渉」という破壊行為にすぎない。
教育でも医療でも個々人の成長にも
言えること。
「フレデリック・ワイズマン」を見る
アテネ・フランセ文化センターにて、
フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー映画を見る。
『臨死』という病院もので、6時間もあるやつだ。
終末医療の現場で、医師、看護師、患者が繰り広げる
生のドラマ。
アメリカのインフォームド・コンセントは、
もっと契約的なドライなものかと思ったが、
そうではないことを知る。
患者、家族の気持ちにいかに配慮するかが、
常に医師・看護師側が心をくだいているからだ。
どの立場が力を持つかのパワーバランスも働く。
ようは一様でなく、ケースごと、かかわる人たちが
それそれ悩みながらやっていくという感じ。
ただ、病院側がいくら誠意をつくそうとも、
むしろつくすがゆえに、
残酷な面がインフォームド・コンセントにはある。
患者の生死の最期のところ、要のとこは、
患者や家族自身に「自分で決めてください」と言い放つことだ。
これは相当にきつい。
重病でふらふらになっている患者、
悲しみにくれる家族にこの問いは過酷である。
アメリカ人というか、西洋人というか、
個人主義の風土らしく、ここは執拗にやる。
この映画の面白いところは、
医師・看護師側のミーディングやなにげない会話を映し、
そうした医療側のジレンマやとまどいも
肉声としてきちんとおさえているところだ。
本当に良いドキュメンタリーとは、
問題のグレーの部分、ジレンマ、葛藤、二律背反、
アンチノミーを、そのままそっくり提示するものだと思う。
答えを考え見つけ出そうともがくのは、見る側であり、
その答えはその人の数だけある。
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