変てこ夫婦
ラジオでノムラ(元監督)さんが、
先日亡くなった愛妻サッチーの話をしていた。
やはり、日本を代表する悪妻を、
悪く言わない。
彼女の口ぐせは「何とかなるわよ」だったそうだ。
絶対絶命のピンチのときも
(その原因は、たいていサッチーなのが)、
そう言われて勇気づけられ、
「なんとかなった」と言う。
いいエピソードがある。
若き日、サッチーとの不倫がもとで、
所属球団を追われたノムラさん。
懇意にしている比叡山の高僧の元に
相談に行った。
しかし高僧は、連れてきたサッチーに会おうとしなかった。
連日のスキャンダル報道であきれていたからだろう。
するとサッチーは激高し、名高き高僧に向かって
「なんじゃ!困ってるもん助けるのが坊主だろっ!」
と啖呵を切ったそうだ。
正論である。
高僧は、世間の常識を真に受けるという
僧あらざる態度を示した。愚僧である。
それ以来、坊様はノムラ夫婦と縁を切ったそうだから
たいした人ではない。
サッチーはどんな人だったかと
アナウンサーが聞くと、
ノムラさんは、「名捕手だった」とボソリ。
「私をよく先導してくれたから」とのこと。
名キャッチャーにして、
ピッチャーの「女房」と言われたこの人は、
家庭でもサッチーの「女房」だったのかもしれない。
己の俗悪さも大びっらにさらしてなお前向きな、
空前絶後のこの変こな夫婦を
世の人が憎めないのは、
彼らが自分に正直だったからではないか。