2017年文化大賞
自分の2017年文化大賞を勝手に決めてみた。
音楽部門は、断トツで13歳のシンガー・ソングライターの
グレイス・ヴァンダウォール。1年でさらに進化して
さらに大人びている。末恐ろしい。
映画部門は、『南京!南京!』と
日藝大生が企画した映画祭「映画と天皇」。
強烈で、「日本人って、何もの?」という問いが
ぐるぐるとめぐる。
演劇部門は豊作。
平石耕一の傑作で、
ピーター・ラビットの作家を描いた『サマービル・レイディ』。
シアターXで上演された、
『アフリカのアルチュール・ランボー』、
サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』。
本部門はいろいろある。
女性作家スベトラーナ・アレクシェービッチ
『チェルノブイリの祈り』に号泣。
それで彼女の本を、立て続けに読む。
女性から見た「戦争」という視点である。
「女性の視点」は最近のテーマで、
トニ・モリスンの『ソロモンの指輪』
『スーラ』『ビラウド』を熱中して読む。
母と娘の複雑な関係。
仕事のスタイルとして参考になったのは、
スタッズ・ターケルの『死について!』。
「死」について64人が語るインタビュー集で、
こんな本を書けたらと思う。
自然科学では、
コンラート・ローレンツの『ソロモンの指輪』。
オオカミこそ、暴力制御本能を持つ、
平和な動物であることを知る。
カール・セーガン『コスモス』からは、
知性のエレガントさを学ぶ。
哲学では、三木清『人生論ノート』。
「幸福は人格」は座右の銘にしたい。
プラトンは『パイドロス』。
この本は高校生にもおすすめ。
料理部門では、
ほうとうを使うものぐさ鍋、
ミキサーによる野菜ジュース。
習慣部門では、
48℃の熱湯風呂→ビール→4本の熱燗→酩酊。
…と、いったところであろうか。
三木清が言うよう、
自分という存在は、虚無の粒子であることを
実感し始めた年であった。
かつて私は「新人類」だった
今の若い人をミレニアル世代というらしい。
特徴として、
テレビ見ない、SNSを使いまくる、
あまり消費しない、
上司の飲みにケーションを断りさっさと帰る
と、いうなら、彼らに大いに共感できる。
テレビはますますくだらなくなったし、
SNSは便利だし、もう物持ちを誇る時代ではないし、
大切なプライベートに
「会社」を持ち込むのは精神衛生上よろしくないし。
思えばバブル前後に成人した自分たちの世代は
「新人類」と言われ、
何かと大人たちに騒がれていた。
「従来の価値観が通じないシラケた野郎たち」
「物質的に不自由を知らない、甘ったれた奴ら」
というニュアンスだったかと思う。
つまりミレニアル世代のはしりだったわけで、
かつての新人類が今の若い人を白眼視するのは
「いい気なもんだ」である。
ただ一つ不気味に思うことはある。
ミレニアル世代は、ちょっと
スマホやSNSなどの仮想現実に
のめりこみすぎではないかということだ。
実体験やら自然やらに離れすぎてないか。
「新人類」の頃は、
インベーダーゲームに熱狂しつつも、
まだ近所に馬糞が落ちていたし、
肥溜めがにおっていた。
「幸」って何だ?
「幸」という字を書こうとすると
よく「辛い」の字が頭に浮かびややこしい。
この字の違いは、てっぺんが「|」か「十」
であるかである。
「幸」の下は、大部分の「辛」の上に
成り立つという古人の知恵が働いている字
なのであろうか。
では、「十」の正体とは何か。
いろいろ仮説を立ててみた。
「1」が「10」になったという物欲の達成、
あるいは、
「十字架」と見たてて宗教への志向、
あるいは、
「シーソー」と見立てて、
すべてにおいてバランスをとる中庸の心、などなど。
ようは「幸」の内容は、
人によって色々ということかもしれない。
ただ、どの「幸」においても
「辛」を積み重ねなければ
たどり得ないというのは
実感として本当らしく思える。
またもう一つ。
「幸」の文字は、
大きく組みあがった字を小さな1本足で
支えるほどに不安定な形態をしている。
地面が少し揺れれば、
コテンと倒れてしまいそうだ。
上の「十」もすぐにとれそう。
「幸」はもろいということを
字は伝えているのかも。
年末雑感
自分は「なになに記念日」とか
「なになにの日」というのを持たない。
会社に通う仕事をしていないので、
休日祭日の意識も低い。
油断すると時間がただのっぺらぼうに
過ぎてしまう。
唯一、何かしら特別な日と感じられるのは
「正月」しかない。
世間が止まっている。
じゃあ、自分も大手をふって無為でいようと思える。
ボーッとすることに落ち着いて没頭できるのだ。
自分のイメージでは、
年末に近づくと時間がどんどん茶色になっていく。
1年の汚れが濃くたまってくという感じた。
その汚れ翌年の1月1日になれば、
いきなりパーッと青空に吸い込まれ、
時間が清められるように思える。
たわいもないが、
子どもの頃からしみついた感覚らしい。
いつも不思議なのは、それを後押しするように
正月の空は、きまって乾燥していて、冷たく
澄んでいることだ。
そのなんとも爽やかな雰囲気が、
「清める」を実感させてくれる。
クリスマスの句
『日本大歳時記』という大辞典を繰ると、
「クリスマス」の項目を見つける。
異国の宗教行事も季語になるというのは、
俳句は懐深い文化なのだ。
挙げられてる句を眺めると、
いろいろあって面白い。
桂信子の「裏町の泥かがやけりクリスマス」
がいいな。
「裏町」は、戦後復興期の頃の
バラックや新しい木造が並ぶ、
夜の街並みを思い浮かべる。
桂信子は大阪出身で、この頃30代だから、
こんな風景の中に生きていたと想像するからだ。
「泥」は、裏町の原っぱの水たまりか、
ひしめく家々の間を流れるドブかもしれない。
真っ黒い泥水に、冬の星々の光が映っている。
そしてその日はクリスマス。
当時の日本の混沌と
西洋の祭りがイメージさせるキラキラした希望が
ないまぜになったような。
こんな句もある。
西島麦南の「天に星地に反吐(へど)クリスマス前夜」。
クリスマスイブに飲みすぎて天を仰ぐ
酔っ払いの句か。
でも、天空からの風が、
ぼんやり熱い頭をキーンと冷やす爽快感がある。
ポルトガル人の謎
先ほど、ラジオで、座ってばかりだと、
なんだかんだの病気になりやすく、
長生きしないといっていた。
日本人の一日平均の座り時間は9時間で、
世界ランク最長。
座ってばかりなのは、
働きすぎ(デスクワーク)が原因らしい。
家に帰ってもみんな寝るまでダラダラと座ってそうだし。
自分もライター作業しているときは、
それくらい座っているかもしれない。
世界第一の座らない人は、ボルトガル人だそうだ。
イラストでは「3時間」と書いてしまったが、
たしか「2時間」としていた。
その他の時間は、ずっと立っているということになるが、
いったいどうやって過ごしているのだろう。
3度の食事に座ったったとしても
すぐに2時間ぐらいにはなる。
なら、仕事もその他もずっと立っているのか。
ポルトガルに行って、つきとめたい気がする。
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