ニュートラル・ゴロー
SMAPの解散報道が、結構面白い。
やれ誰がノイローゼだの、裏切り者など、
賑やかである。
そのごたごた喧嘩する中で、唯一みんなが安心して
連絡を取り続けられるのは、稲垣吾郎だけだそうだ。
表ではこの人は、一番目立たない。
個性が薄い分、濃すぎる他メンバーの調整役なのかもしれない。
彼を「中間管理職」というメンバーもいる。
人間集団をうまく回すには、
こういうニュートラルな人が軸に存在することが必要なのだ。
そういう意味では、SMAPは、各自のキャラが立つ
最高にバランスとれた芸能グループである。
たまたまできた「芸術作品」ともいえる。
「作品」といっても生身の人間なので、
不調和は起こり得る。永遠の「最高」はありえない。
いつかは桜のようにパッと散った方が、20うん年も続いた
日本の国民的アイドルとしてはむしろ良いのではないか。
しょせん40歳も超えれば、
「アイドル」は、どだいきついわけだし。
リーリーリー
ここ最近、毎日、グリコの
「LEE ビーフカレー 辛さ×20倍」を食べている。
どうも自分は、食においては、一度気に入ったものを
何度続けて食べたがる傾向がある。
「LEE」の場合は、その癖と、
食費コスト削減に結びつくので、なおさらだ。
朝10時頃に食べれば、
お腹にかなりインパクトを与えので、
朝食昼食を兼ねることができる。
加えて、正午になると「外食したい!」という
突発的な欲求を抑えることもできる。
1パック186円。
ヒーヒーヒーと汗を拭き出しながら
リーリーリーと食べに食べる夏。
「変人」、共に歌う
夜、新文芸座で、
映画『サウルの息子』と『ハンナ・アーレント』の2本立てを見る。
どちらもナチスによるユダヤ人虐殺がテーマとなる。
『サウル』は、アウシュビッツ強制収容所で、
コマンドーを命じられ同胞の死体処理させられるサウルの話。
ガス室で生き残った少年が自分の息子だと知るが、
すぐにナチスに処刑される。
サウルは、息子の遺体を持ち出し、ユダヤの供犠に
基づき埋葬したいと奔走し、周囲の仲間に迷惑をかける。
周囲は1000人2000人という人間を殺す激しい労働と
監視があるからだ。
そんな個人的行動の発覚は、即自身の死に結びつくし、
第一気ちがいじみている。
しかしサウルのこの行動は、ナチスを本質的にひっくりかえす
力を持つことを、
次に見た『ハンナ・アーレント』が教えてくれることになる。
後者の映画は、イスラエルの裁判所で裁かれた
ナチス高官のアイヒマンに対するハンナの言動がストーリーに。
アイヒマンは強制収容所の大量殺人を指揮した人物。
傍聴席に座り裁判を注視したハンナは、
彼の「悪の凡庸さ」に愕然とする。
大悪党どころか見出すのは任務に忠実な小役人の姿で、
大量殺人に対する罪悪感も希薄だからだ。
彼は直接は手を下していない。
映画は、ナチスの犯罪が新しく、また実行しえたのは、
ユダヤ人から人間性を剥奪し、「物」化したからであることを
よく描いている。その上で殺人の大システムが一端出来上がれば、
もう誰も止められなくなる。
サウルの収容所は、ヒステリックに作動し続ける大工場と同じ。
ハンナは、アイヒマンにならないためには
「思考停止せず、考え続けること」だと学生に言う。
寡黙なサウルが、どう考えたかどうかわからないが、
息子の遺体を「物」と見なせず、「息子」だとする
自然の感情を断固として守ったことで、
ナチスの人間性剥奪の原理に対抗しえたわけだ。
だが、ハンナの言うように、
周囲が悪のシステムと化したとき、
「考える」ことは自分の立場や命を危険にさらす行為にもなる。
これは怖いことだ。「考える」ことをやめ、平穏無事に
暮らしたいという「悪の凡庸」さは、
実は誰にでもあり、人はそもそもみんなアイヒマンなのだ。
一方、サウルやハンナは変人である。
だから凡庸な自分たちは、1メートルでも1ミリでも
この変人に近づかなくてはならない。
ハンナの言葉、「根源的な悪は存在せず、
根源的なのは善のみ」は、いいなぁと。
毒かわいい
何気なしに、
図書館で借りてきた草間彌生の作品集写真を
模写してみる。
この人のじぃと見つめる目力がすごい。
岡本太郎よりドスがきいている。
作品ら浮かぶキーワードは、「かわいい」「毒」「ギョギョッ」。
部屋に飾れば、相当落ち着かない。
味噌汁にごはんというわけにはいかない。
極彩色の南国のフルーツを
金の鍋で煮て食う感じがぴったり。
アッ!と驚く為五郎
テレビがないので、
今回のリオオリンピックは、さっぱり見なかった。
ただ、ユーチューブで、昨日の閉会式の一部を知る。
安倍首相が、スーパーマリオの姿で、
グランドの土管から現れた演出はなかなか鮮やかで、
日本もやるもんだなぁと思った。
次の東京五輪を、アッと世界にPR。
電通とか博報堂とかが、がんばってるのか。
権力者とキャラもののからみは、危うい面もある。
マリオの髭が、ヒトラーの髭につながるという
あざといサイトも出ていたが、
光と影のいろんなイメージが絡み合って発信してしまうのは
いたしかたない。
今後、世界中のメディアで、
マリオと安倍さんを融合した揶揄なりジョークが
産み出されることだろう。
裂かれる!
新文芸座の「反戦・反核映画祭」で、
塚本晋也監督の『野火』を見る。
原作は、あの大岡昇平の名作である。
実際にレイテ島で戦った元兵隊に、
10年かけてインタビューし、細部を再現している。
戦争を当然知らない
1960年生まれの映画監督は、取材で得たリアリティを持って
レイテ島でカメラを回した。
上映後のトークショーで語られたが、
塚本監督自らが主演を務めたのは、
映画づくりを通して、
実際に「戦争」を体験してみたかったからだという。
その結果、画面は個人の肉体感覚を濃厚に持ち、
戦場の異様な感情が生々しく伝わってくる。
あの状況に放り込まれて飢えれば、
自分もあさましく芋を奪い合い、
人肉に唾を飲むかもしれないと思う。
ズガガガガッと米軍による機関銃の膨大な弾が、地面を帯状に叩き、
兵隊の肉体をズタズタに引き裂くシーンはすさまじく、
その大音響が腹に響く。
「あっ、やられる…」という感覚を少しつかむ。
10代の頃に見たら、確実に夜、うなされるだろう。
この時代には「戦争擬似体験」というワクチンが必要なのだ。
人格をゼロ状態へと剥奪する状況を作り、
その上で人の体と心をただズドズド蹂躙壊する戦争は、
やはり「野蛮の極み」との実感が、
コモンセンスとして共有されるべし。
戦争するしないの話は、そこからしか成り立たない。
おしらせ
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