ごみ箱エレジー



なんとなく悲しそうな蛙に見える。

ほの赤い風景



スーパーの通り道。ひんやりと金木犀が香っている。いい季節だ。秋は。
 

余計者



CDで太宰治の『人間失格』を聞く。この作家が自殺の一か月前に完成した作品だ。主人公の葉蔵は、彼の人生と重ねられている。次々と女性と関わりながら、自殺未遂をし、酒に薬におぼれゆくストーリー。学生の時に読んだ時、その自己否定の方向が、思春期の自分に近くてただ「痛い」だけだったが、今はしみじみ面白いなぁと。太宰は、自身を世の「余計者」に追い詰めて、じたばた存在の不安を見据えた求道者である。そしてエンターテイナー。底が抜けた失格の人間。

 

秋と鍵



イカの塩辛を食べる。おちょこの焼酎を飲む。机にほおづえをつく。手持ちぶたさになる。目の前に転がる自転車の鍵をスケッチする。鍵穴がぽっかり中空に浮かんでいる。差し込んで回す。何も変わらない。秋の夜長…。

 

悪夢の調べ



映画カタログの一冊『サラバンド』が本箱にあった。スウェーテンの巨匠イングマル・ベルイマンの最後の傑作。この人の映画は後味が複雑で、ウァーッと憂鬱になるが、何回も見たくなる悪夢のようである。人生最後の作だから、悟りがあるかと思えば、ない。登場人物のむき出しの個性がゴリゴリぶつかり、愛し合って憎み合う姿がグロテスクに、これでもかっ!と描かれる。西洋人のしつこく厳しい孤独は、日本のわれわれとは異質で、どうしょうもないなと思う。しかし、その孤独感は変形しつつも、現代日本人の心の底の方で流れている。どうしょうもないと、映画を通して自分を見つめることで「救い」を仄かに感じるのは、あちらさんもこちらさんも同じかもしれない。それにしても、ラスト、娘さんがチェロで演奏するバッハの「サラバンド」の調べは、憂いでいっぱい。ああ、人生ってと嘆きたくなる。底意地の悪いベルイマンが、舌をべーしている顔がちらりと見えなくもなし。

酢豚、やや成功



料理本を見ながら、酢豚を作る。あのとろみが一応出て、妙に感慨深い。片栗粉というのはとろみをつけたり、衣になったり、実に偉大な粉だと思う。食材同士をつなぐ万能接着剤である。これがなければ、あのお好み焼きもタコ焼きも生まれなかったわけだ。ところで酢豚は、砂糖を大匙5杯も入れる甘々の料理だということに改めて気づく。


わが偶像



どっさりある映画カタログを引き出すと、『イーオン・フラックス』が出てくる。スカッと爽快な映画だったなぁ。全身黒のシャーリーズ・セロンが超人的な武闘で、悪人どもをビシビシ打ち倒していく。プロの仕事師で、動きに無駄なし。カッコイイ。このスタイリッシュな人を、日本の居酒屋に誘って、湯豆腐なんかすすめてみたいと、ふと思う。

 

「独り酒」のお手本



井伏鱒二の『厄除け詩集』より。続く詩は…それも塩でくれえ/酒はあついのがよい/それから枝豆を一皿/(略)/今宵は仲秋名月/初恋を偲ぶ夜/われら万障くりあはせ/よしの屋で独り酒をのむ…いい飲み方だなぁ。

 

貪婪(どんらん)な舌



『自然のしくみ図鑑』より「イエネコ」を模写。ネコの舌を拡大したら、無数の舌あり。全て味わい尽くしてやる、といった迫力と不気味さを感じる。ネコって、相当の美食家なのか。動物の舌って、みんなこんな風なのか。

宇宙時代の広告



IKEAカタログの創作バージョン。「無住力空間の家族」がテーマの、宇宙時代における商品広告を描いてみた。宇宙ステーション内の住居、あるいは重力が地球の1/6の月面ハウス内を設定。ただし2015年9月時点の価格で、ベッドフレーム59,990円、布団掛けカバー&枕カバー3,499円…。ベッドを固定する留め金や、体を縛るベルトがいるなぁ。

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