白いジャン・コクトー

 

ホワイト5/この詩を書いたのはジャン・コクトー。詩、小説、絵、映画も手がけたマルチなフランス人。私は彼のモノクロ映画『詩人の詩』が一番好きだ。石膏が美女に変身したり、鏡が突然水になってドボンとはまったり、雪合戦で少年が血を流したり。エレガントだが濃厚な味がする白い映画だ。詩もやはり同じテイスト。貝と耳の形の連想で、音と海がポーンとつながり、自分の体がワーッと白い空に溶け込むような感覚が素敵だ。コクトーのホワイトの背後にはギリシア悲劇のような悲嘆があるが、堅く硬質。ドロドロしてない。だから表現全体は、軽やかで、白い。

白のイメージ

 

ホワイト4/今の自分はどうも「白」に対して、あまりよいイメージが浮かばない。汚れたものを漂白するイガイガした洗剤、しら(白)ばくれた嘘つきの顔、白いマントをはおった正義のヒーローの下心…つまり白は、実際のどす黒い本当のことを覆い隠す色、という感じ。このひねくれた連想は、年齢的なものかもしれない。40代ともなれば、現実と虚構のギャップがいやでも目に入り、世界が善悪入り組んで成り立っていることを体感している。白が清らかなホワイト、光輝く白に見えるには、さらなる年月が必要なのか。あるいは、ますます薄汚れて見えるだけなのか。

白い闇

 

ホワイト3/人形かと思ったら、やせきず少年でギョッとした。おどけてはいるが、痙攣したようなイラだち、憎悪が強烈に伝わってくる。この子の頭の中では、自分が投げつけた手りゅう弾が炸裂し、ホワイトの閃光で満ちているのかもしれない…。アメリカの女流写真家、ダイアン・アーバスの写真集の一枚。ユダヤ人の中流家庭に生まれた人だが、写真の題材では、不愚者、アウトロー、精神異常者などを追い続けた。その写真をじっと見ると、薄氷を渡るような心持ちになる。とても危うい。狂気の世界への異様な関心と恐れから生じる緊張感に耐えがたくなったのか、彼女は自殺してしまった。白々したこの世も、ひと皮めくれば、深淵の闇が広っていることを示して。

「白」民党総裁、再び

 

ホワイト2/9月26日、安倍晋三氏が自民党総裁に選出。県内の党員選挙では石破茂氏が圧勝したが、総裁選本選で安部氏が勝利した。祖父の岸信介は、戦犯で一度失脚し、戦後首相として復活した「昭和の妖怪」。そのずぶとさは血なのか。報道では何となく自民党が次の与党になる雰囲気だが、「安倍首相」も蘇るのか。日本列島に、ホワイトな、白々とした空気が流れる…。

グルグル目まいホワイト

 

ホワイト1/200円コーヒーを飲む昼下がり。心地よい白っぽい光につつまれる。手元の携帯電話で電話をかけようとした時、ホワイトの画面に、まず数字の「0」がくっきり浮かぶ。すると妙な疑問が頭にわく。ホワイトというのは、色でいえばゼロのことなのだろうか。いや、ブラックこそ色の元になる光がないということでゼロなのでは。でも、ブラックもない状態こそホワイトなのでないか。そんなどうでもいいことをグルグル考えて目が回る。ホワイトの世界の入口。

青い月

 

ブラック完/時は未来、30世紀頃。輪廻転生を経て私は、月面にある自宅から、ブラックな宇宙空に浮かぶ地球という青い「月」を眺めている。祖先である、地球ジャパン島に生きた英雄の詩を思い浮かべてみる。戦国武将の上杉謙信のものだ。月の人工大気は夜になるとマイナスうん十度に冷え込む。しかし月の鳥はけなげに飛んでいる。地球の大陸は温暖化でみんな海に没してしまった。だから星は、青く輝くトルコ石のように美しくなった。海は人類が汚しまくって有害物質だらけだが。それを思うと、「秋気清し」の、寒くてしんしんとした感傷がじっとこみあげてくる…。

ブラックなアメリカ

 

ブラック6/崎谷博征著『医療ビジネスの闇 "病気生産"による経済支配の実態』(学研マーケティング)を読んでいる。アメリカの製薬界は、年間約8000万ドルの費用をロビイスト活動(政府の政策に影響を与えること)に当ててるという。ロビイストは元議員や議員秘書だったり。政府とロビイストの間にはいつでも入れ替わる回転ドアのような仕組みだそうだ。日本の天下りをもっと直接的にやってしまったもの。それで人体に有害でも売れる薬であれば取り締まれない法律をガンガンとつくってしまう。業界の利益をごり押しするシステムで、とんでもないと思う。日本も「ロビイスト活動が必要だ」という人もいるが、こんなアメリカの闇は真似なくてよし。

虚飾ブラックで活!

 

ブラック5/斬った黒もやが、パリコレのブラック毛皮に。恐らくうん千万円もするだろう。富裕層の貴婦人がまとうであろうそれは、世の中で一番無駄で腹立たしく思うものである。だが、実際にすっと腕を通せば、モデルさんのように背中がシャンとしそうである。何だかセレブになったような虚飾のオーラで気は大きくなるだろう。まあ、世の中はったりも必要だが。

斬る!

 

ブラック4/ブラックなもくもくを斬るのは 椿三十郎に扮する三船敏郎。黒沢明作品のアクション時代劇の殺陣(たて)は様式化せず、実際の斬り合いを再現した野性的なものだ。その映像を思い浮かべ、我が心の刃で憂鬱な雲を、斬る!

朝の黒いモヤモヤ

 

ブラック3/昨日の「黒葡萄」がほどけて、ブラックなもやもやになった。これは朝起きた時の、憂鬱な気分。なぜかいつも起きぬけに、胸の中が寂しい感じでいっぱいになる。日が昇り、活動的な時間帯になると、その煙はいつのまにか退散してしまう。ずっと付き合ってきたこのブラックは、体がフワフワ浮き上がらないための重しでもある。

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