開戦時の裂け目

 

集英社「戦争×文学」3/第8巻「アジア太平洋戦争」に掲載の上林暁著「歴史の日」(上の絵)、豊田穣著「真珠湾・その生と死」(下の絵)より。両短編を読むと、12・8開戦」という歴史的事件は、伝えられる側と現場とはまるで世界が違うことに気づく。庶民は報道による国威発揚で、素朴に国運に身をゆだねている。一方、華々しい戦果のあった戦場の現場は、あまりにもお粗末な装備が示す、戦略の危うさが、もう生じている。特殊潜船艇とは、米軍の艦船に迫る肉弾である。海の特攻隊だ。小説の主人公・酒巻少将は、貧弱な艦船の事故で米軍の捕虜になる。この二篇で、報道について考える。事象のニュースを受けとる側は、日常生活の中で解釈している。でも、現場の危機は、やがて平凡な日常を蝕み、破壊する脅威となる。現場の破たんを、知るべきときに知れなかったからだ。本当のことは、今も伝わりにくい。

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