ナイアガラの女王

 

絵本をよむ2/

 

「絵本の魔術師」といわれる

クリス・ヴァン・オールズバーグの『ナイアガラの女王』も

かなりシュールな作品だ。

 

未亡人62歳の教師アニー・テイラーが、

自営の学校が流行らなくなり、老後の生活を思いつめる。

今更、店員や掃除婦をやるにもプライドがある。

そこで思いついたのが、

ナイアガラの滝を、樽に入って下り、

有名になって金持ちになろうとのこと。

ムチャクチャな発想である。

そして、それを実際にやってのけた!

しかも、この話は20世紀初頭にあった実話である。

(ただアーニーは金持ちにはなれなかった。

そこのところも、絵本はユーモラスに描いている)。

 

オールズバーグは、幻想的なビジョンを、

淡彩でリアルな描写によって現実化していく作家だ。

『ナイアガラ』は、いつもとは逆に、

「現実」の中の「幻想性」を具体化している。

樽の中に入ってナイアガラを下るという

いい歳をした淑女の試みの中に、

現実を幻想にする魔術を、オールズバーグは察知したのである。

 

ラストページがふるっている。

おばさまアニー・テイラーと樽のセピア調写真が

紹介されている。

やはり本当の話なんだと思うと、愉快である。

しかも、彼女のあとに続き「滝下り」して成功した面々の

名前を4行書き入れている。

だが、唯一の女性は、最初にやってのけた

アニー・テイラーその人。

 

こうした無謀の人がいて、

またそれを芸術的に表現してしまう人がいるのは

アメリカの面白いところ。

 

 

 


スポンサーサイト


コメント
コメントする








   

このサイト内を検索

sponsored links

携帯ページ

qrcode