電車内のベンチに座っていると、

子どもの「いやだ!いやだ!」の声が、

車両端から聞こえてくる。

人陰で姿は見えない。

 

最初は気に留めていなかった。

しかし、何駅も過ぎ、5分10分20分経っても、

その声はやまない。

時々、激高したようなジダンダも入る。

 

しつようだなと思っていると、

髪の長い女の人が速足で目の前を通り過ぎる。

その後で、5歳ぐらいの女の子が

泣きじゃくりながら追いかける。

 

「いやだ!いやだ!」は止まらない。

母親は、我が子の方をいっさい見ない。

 

「いやだ!」の意味が分かった。

子どもは、「いやだ、見捨てないで!」と、

怒りと恐怖の声をあげていたのではないか。

崖から落ちる体を石くれをつかんで支え

悲鳴を絞り出している、

そんな凄惨な気持ちが伝わってくる。

 

二人は、四谷の駅で降りた。

子は「いやだ!」を繰り返しつつ、

速足の母を追っていった。

 

人は人生の始めから

もう絶望を学ぶ。

 

その日、ひどい夢を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


スポンサーサイト


コメント
コメントする








   

このサイト内を検索

sponsored links

携帯ページ

qrcode