牛たちの怒気

 

映画『福島 生きものの記録』3/

 

5本上映の最終プログラムが第1作。

もうくたくただったが、見入ってしまう。

 

震災1年後の被災地に、野生動物や家畜が

入り込んでいる風景が強烈だった。

特にショッキングだったのは、

野生化した牧場の牛たちが塊となって、

カメラクルーと対峙したシーン。

雑草か竹藪の向こうから、

こちらをじっとにらむのだ。

人間を警戒しているその目が

赤く光っているように思える。

怒気のようなものを感じる。

しばらくすると、ドドッと踵を返して

走り去った。

 

牛の目といえば、

優しくやわらかなまなざし、なんて

古来より歌に歌われてきた。

インドで出会った街中の牛も、

小売店の人たちがうるさがられ「あっちへ行け」と

バンバン手で叩かれていたが、

いたって穏やかな表情をしていた。

 

だから、被災地の野生化した牛の

猛々しい目に戦慄した。

思えば、牧場の牛たちは、

人間に食われるために育てられる。

その絶望的な囲いが震災という″行幸”で崩壊し、

自由を突然得てしまった牛たち。

得たと同時に人間に対する怒り、

また生きる力が吹き出てきた、

そんなふうに考えてもみる。

 

人間社会は、野生を圧殺して成り立つ。

その圧がなくなれば、野生はすぐに甦る。

圧殺自体が不自然でエネルギーのいることだからだ。

 

岩崎監督は、『野生の王国』というドキュメンタリーを

撮り続けた人である。

だからあの牛たちの殺気を

とらえ得たのではなかろうか。

 

 

 

 


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