認識について
筆先がつぶれてしまって、もう捨てなきゃと
思っていた筆ペンで、
気まぐれに線を引いてみた。
あれっ、枝つけたら木になるな。
下に点々つけたら落ち葉、で、ここは森…。
物理的に言えば、黒い墨でつくったシミである。
それを「森」とするのは、
こちら側の「認識」という加工が入っている。
絵は、あくまで見立てであり、
本物を想起させる媒介である。
シュタイナーは、物を本当に認識するには、
感覚器官による知覚内容を思考による概念化が
必要という。
裏返せば、それができれば、
現段階の狭い枠の中の認識の先へ行き、
本当の本質を知ることができるというわけだ。
絵を描くということは、まさに、
そこへ至るための一つの手段、
つまり思考による概念化を、手作業を
通してやることではないかと考えてみる。