「フレデリック・ワイズマン」を見る

 

アテネ・フランセ文化センターにて、

フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー映画を見る。

『臨死』という病院もので、6時間もあるやつだ。

終末医療の現場で、医師、看護師、患者が繰り広げる

生のドラマ。

 

アメリカのインフォームド・コンセントは、

もっと契約的なドライなものかと思ったが、

そうではないことを知る。

患者、家族の気持ちにいかに配慮するかが、

常に医師・看護師側が心をくだいているからだ。

どの立場が力を持つかのパワーバランスも働く。

ようは一様でなく、ケースごと、かかわる人たちが

それそれ悩みながらやっていくという感じ。

 

ただ、病院側がいくら誠意をつくそうとも、

むしろつくすがゆえに、

残酷な面がインフォームド・コンセントにはある。

患者の生死の最期のところ、要のとこは、

患者や家族自身に「自分で決めてください」と言い放つことだ。

これは相当にきつい。

重病でふらふらになっている患者、

悲しみにくれる家族にこの問いは過酷である。

アメリカ人というか、西洋人というか、

個人主義の風土らしく、ここは執拗にやる。

 

この映画の面白いところは、

医師・看護師側のミーディングやなにげない会話を映し、

そうした医療側のジレンマやとまどいも

肉声としてきちんとおさえているところだ。

 

本当に良いドキュメンタリーとは、

問題のグレーの部分、ジレンマ、葛藤、二律背反、

アンチノミーを、そのままそっくり提示するものだと思う。

答えを考え見つけ出そうともがくのは、見る側であり、

その答えはその人の数だけある。

 

 

 

 


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