エキゾチック『犬ケ島』ジャパン
ミニシアターのユジク阿佐ヶ谷にて、
ウェス・アンダーソン監督の人形アニメ『犬ケ島』を見る。
独特な映像表現が圧巻。
映画全体が、日本のアートと日本映画のオマージュになっている。
戦国時代の武将から江戸、明治から昭和の絵画や習俗のイメージが
ふんだん取り込まれつつ、アメリカ人の感性で料理されているので
より不思議な世界となる。
ストーリーは冒険活劇。
近未来の日本の大都市であるメガ崎市にドック病が大流行。
人間への感染を恐れた小林市長が、すべての犬を「犬ケ島」に
追放する。市長の養子で12歳の少年アタリが、愛犬で親友のスポッツ
を救うため、単身小型飛行機に乗り込む…。
面白いのは、明確な個人意識を持ち、ドラマを進行させるのは、
青い目の犬たちである。その心性はアメリカ人、しかも白人的である。
冒頭の犬たちのやり取りやカメラアングルは、まさに西部劇である。
主人公である日本人少年アタリの意思はどちらかというと希薄で、
大勢の日本人は集団で行動し判断する組織人間に描かれている。
そして個人としての行動を迫られると、非常にもろく、
運命を切り開けずに殺されたり(渡辺教授)、
めげたりする(ヨーコ・オノ)。
犬派の民主勢力である学生運動をグイグイ引っ張るのも
青い目の留学生少女トレイシーである。
犬を「外国人」と見立てれば、この映画は、
日本に対する外国人の心理的葛藤ともとれなくもない。
日本人に接しようとすると、かえってくるのは組織としての
感情なりリアクションで、個人の姿がかき消えてしまう。
意志あるアメリカ人は、日本では「犬」レベルの友人としてか
見てくれない。
いつまでたっても「外人」と呼ばれる異邦人扱いなのだ。
映画はそのうっ憤を表現する意図でつくられていなだろうが、
無意識に現れ出ている気がする。
異国のアニメーターが異国のヴィジュアルソースを使い異国を
描くことは、とても刺激的。
ロシア人やチェコ人のアニメーターが描く「日本」も
見てみたいもの。