原生林を守る村へ



パプア調査1/2012年10月13日から11月3日まで、パプアニューギニアのニューブリテン島で旅をしていた。「パプアニューギニアとソロモン諸島の森を守る会(以降、守る会)」の調査に同行したのだ。1994年に発足した 同会は、会名にある地の原生林を、大規模伐採から守る活動を続けている市民団体。今回、同会が2004年より訪問しているニューブリテン島南岸の村々を、清水靖子、飯出さえ、上田隆の3名が回った。これから、原生林を守る村人たちの声や、会の調査を通じて知りえたことを、イラストルポの報告書として紹介していきたい。まずプロローグとして冒頭にて調査の背景(参考文献/『ニューズレターNO.34』清水さん執筆の報告書)を説明しよう。(上田隆)

森が育む命の水



パプア調査2/ワラ・カラブ滝。水しぶきの霧の奥にある岩穴から、ゴーッと清水がほとばしり出る。森の精が口を開けてうなっているよう。マラクル村からジャキノット湾をボートで横切って10分ほど位置し、地元の人はカーヌーで水汲みに来る。その水は、石灰岩の大地をくぐって豊富なミネラルを含み甘い。マラクル村に湧くスシ泉の水も良いが、この滝の水はさらに美味しい。飲めば体の内からヒヤヒヤと心地良い。水浴びすれば、体が溶けるよう。心身癒す命の水は、原生林が育む。

破壊が、止まらない

 

パプア調査3/命の水を育くむ原生林の伐採が止まらない。ブルドーザーが無残に切り刻んだ森は、血のようなラテライトの地面を赤くさらす。生態系は寸断され、生けるものの楽園の暮らしは踏みにじられる。つややかな水は死んで、濁る。パプアニューギニアにおける1972年から2002年の30年における森林皆伐増加と劣化率は、今回調査するニューブリテン島がぬきん出ている。ちなみに同国の伐採丸太の輸出は、2006年270万、2007年288万、2008年126万、2009年210万、2010年299万、2011年350万(単位は立法メートル)と急増。丸太の輸出先は日本中心の1990年代から、中国中心の2000年代と変化している。ただし、中国が合板で加工したものが日本に輸入されている「三角貿易」が実際の姿。日本の熱帯材の合板輸入量も、日本の合板の消費量も減っていない。森林破壊に、日本は、今もしっかり加担している。

企業は森を二度殺す



パプア調査4/企業は皆伐によって、原生林を二度「収奪」している。一度目は、森を丸刈りにし、丸太材を世界中に売りさばく。これが建材や紙の原料となって消費されていく。二度目は、更地にオイルパームを植林し、プランテーション農業を展開する。生産された実は加工され、パーム油とななる。油は、食品添加油、化粧品、シャンプー、洗剤、マーガリンなどの商品に化けていく。農地の土壌は熱帯のラテライトで地味薄く、大量に農薬が投入。結果ひどい土壌汚染に。しかし企業は、「これは植林であり、エコな事業」と喧伝する。一方で、暮らしの糧を失った現地の人が雇われて、木を伐り、農場で働く。森を実体的にも精神的にも死に至らしめ、莫大な利益を手にする企業。その貪婪さは、まさに餓鬼的。

四文字の悪霊



 パプア調査5/パプアニューギニア政府と企業がタッグを組み、「原生林伐採→オイル・パーム・プランテーション」のシステム化を強力に進めている。SABL(Special Agriculture and Business Lease/農業・ビジネス特別リース)政策だ。パプア政府(土地省・農業省・森林省)は、SABLの下、99年間の土地リース・リースバックを行っている。2003年7月から2011年1月の間に、結果として500万ヘクタールの土地(国土全体の11%)がリースされるに至る。囲いこまれた土地内の原生林(絵ではリングの中)は伐採企業の不法契約の対象となり、好き放題に伐られていく。主な伐採企業は、リンブナン・ヒジャウ社。皆伐・丸太輸出・プランテーションを一手に行う。企業による不正契約の流れは次の通り。地主との間に入る仲介業者にカネをばらまく→仲介業者はそのカネで政府・官僚・有力者や長老を買収→土地所有者(そうでない場合も多々)にサインを強要→多くの村人たちはカヤの外で、知らぬ間に自分たちの土地がSABLに入れられ、ある日突然、伐採開始の現場を目の当たりに…。この傍若無人のSABLを、クロコダイル(ワニ)の悪霊に例えてみた。調査のキーワードとなる四文字。



「温暖化キャンペーン」も絡みつく

 

パプア調査6/SABLは、”温暖化防止キャンペーン”の炭素貿易とも連動。炭素貿易とは何か。京都議定書で、温室効果ガスとされるCO2(二酸化炭素) の排出上限量が目標数値が決められている。しかし現実には減らせない。そこでCO2の排出超過分と不足分を市場で取引きできることにしたのが炭素貿易だ。CO2を出す先進国や企業が、炭素クレジットカード(CO2削減に貢献したとのクレジットカード)をカネで買う。そのカネが、”温暖化防止キャンペーン”仲介業者を経て、熱帯雨林問題の当事者であるパプアニューギニアなどの政府の懐に入リ、REDD(Reducing Emissions from Deforestation and Degradation in Developing countories)というプロジェクトにつながっていく。REDDとは、開発途上国における森林の破壊や劣化を回避し、CO2を削減しようとするもの。その削減方法として、プランテーションによる植林を認める。植林すれば、CO2を吸収する「森」ができるから。この理屈とカラクリに悪霊が潜んでいる…。※上のイラストは、大きなカネの流れをイメージ化したもの。


エコでない「緑」

 

パプア調査7/前述のREDDを支えるのはFAO(国連食糧農業機構)。この国際機関は、「森林」の定義として、プランテーションを認めている。その前提として、SABLの元に進められている原生林の伐採という事実は伏せられ、衛星からの緑の増加でOKとしている。

原生林の、光と影へ

 

パプア調査8/では、パプアニューギニア本島より北東にあるニューブリテン島へ、現地の人の声を聞きに行こう。主な訪問地は、守る会が支援する村々で、3つのタイプとなる。仝鏡故咾鮗蕕蠡海韻討い訝楼茴マラクル村・ウボル村・クランプン村。SABLの下の不法伐採地域→カイトン村。F商岩井(ステティンベイ・ランバー社)の伐採下にあったが、現在独立して伐採を拒んでいる村→アミオ村。マラクル村は2回訪問し、ここで原生林の中の暮らしに触れる。ちなみに、地図の背景の色は、パプアが国旗、ニューブリテン島は東ニューブリテンの旗の色を使用した。後者は、真ん中が緑のストライプで、豊富だった原生林を象徴。黒のせいで少し重苦しい画面になったが、「影」の部分をしっかり見ていきたい。もちろん「光」である森と森を守る人々も。

精霊が出迎える

 

パプア調査9/ラバウルの空港ロビーの壁画に描かれていた、東ニューブリテン州の精霊であるバイニン(右)とトーライ(左)の姿に心なごむ。パプアニューギニアに来たんだと実感。ここまで約10時間。2012年10月13日夜9時に東京・成田空港を発って、翌日14日朝7時に首都ポートモレスビーに着くなり慌てて国内線に乗換えた。意外と予定通り。清水さんは、守る会の設立当初から活動する方で、今回の調査の主体者。そしてベリス・メルセス宣教修道女会のシスターだ。ステンドグラス作家の飯出さんとライターの私・上田が同行する。

二人のリーダー

 

パプア調査10/10月14日から17日まで、ラバウルから南東20キロに位置するココポにある教会区に滞在した。女性陣は修道院のOLSH、私は教会弁護士のフランシス・メリさんの自宅に宿泊。15日は、今回の調査をコーディネイトしてくれるポール・モヘ神父と妹のマリアさんと共に、南岸を巡るボートのガソリンの手配にラバウル港一円を奔走した。車にドラム缶を山積みするのに少し驚く。20%のガソリンは、マラクル村までの燃料に。伊吹吾郎似のポール神父は、教会としてのニューブリテン島南岸の視察・監督責任者である。マリアさんは地元女性のリーダーだ。お二人とも余計な世辞は言わぬといった実務的な感じだが、頼れる指導者の風格が漂う。

| 1/2PAGES | >>

このサイト内を検索

sponsored links

携帯ページ

qrcode