はじめに

 

1/私はライターの上田隆と申します。先日、東京都中野区を拠点とする河合工務店の仕事を絵と文でつづった冊子を制作しました。上はその表紙 (デザイン=イマジンクリエイション・伊豆田昌功)です。
 河合工務店は、3つの柱があります。日本の山の木を使うこと。化学建材を避けること。伝統の技でつくること。この柱を徹底的に追求して、本当に心地よい健康に配慮した住まいを日々つくられています。そこに惹かれ、1年かけて取材させていただき、「絵によるドキュメンタリー映画」のつもりでまとめました。
 同工務店の河合孝前社長とは、「パプアニューギニアとソロモン諸島の森を守る会」がご縁で知り合いました。河合前社長も私と同じく、熱帯の原生林伐採に反対する村に滞在するツアーに参加されています。熱帯材の合板使用に異議をとなえておられ、自然を破壊する森林伐採の現状をこの目で確かめられたとのこと。社会への主張と家づくりの仕事がつながっている河合工務店の魅力をここに描きこみました。
 冊子は2012年4月13日、目黒雅叙園にて開催された、「三十年感謝の集い」にて配布。同日に三代目の河合稔さんが新社長に就任されました。それゆえ、このブログで披露する冊子の内容(全93枚)を、同社の歴史書であるとともに、未来の宣言書として読んでいただければと思います。
  

では、幕を上げます…

 

疲れ切った日本の山

 

2/山の過酷な現実は、バスを降りて徒歩10分ほどで目前に。ここは「芭蕉の里」といわれる黒羽(栃木県大田原市)。案内役の森林組合の人が、山の入口で、参加者約70名の足を止める。「この枝打ち機を修理する会社自体が、もうありません。現在、林業全体が疲弊しています。木の値段が下がり、切り出しても利益が出ないのです」。
 河合工務店主催のツアーは、日本の山の実態を見てほしいと、建て主や一般市民に呼び掛けたもの。私は、建築家の辻垣正彦さんに誘われ、雑誌の取材として参加する。

山を所有する理由

 

3/同工務店の河合孝社長は、林業の現状を世に問い、かつ支援するために黒羽の山を購入。その山で、建て主自身が、自分の家の大黒柱となる木を伐採し、植林するイベントを実施している。地元の森林組合も協力。
 安い外材が住宅産業の主流となり、国産材は使われなくなった。一方で、日本の人工林は荒れていく。特に「間伐」という手入れが滞っている。一部の木々を切ることで、木の込み具合を防ぐことだ。河合社長の山は間伐され、木が立派。しかし隣の山はそれが行われず、絵のように。今の日本の山の典型的な姿。

小さな苗に命をつなぐ

 

4/杉の大木に、お神酒が注がれる。その後、チーンソーの響きとともに、バリバリ、ズンッと倒される。建て主は、今、命を失った木が、これから自分たちの家を支えてくれることを実感。そして建て主含む参加者は、小さな苗を1本、そっと山に植林する。弱々とした緑は30年50年後には大木となるだろう。山の命は続いていく…。
 お土産店にも寄り、ビールやジュースが振る舞われる帰りの車内。ある建て主が、上のことをホロリともらす。これに答える河合社長のまなざしが胸に残る。

森がざわめく

 

5/伐採バスツアーから2カ月前、私はパプアニューギニアにいた。森林伐採に反対する地元の村で一週間過ごす。森のめぐみを受ける自給自足の生活は新鮮だった。その風景を思い出す…国道を走るバスの中で…ビールにボーッとして…。

パプアの風に押され、取材開始

 

6/伐採バスツアーから半年後、河合工務店に初めて取材に訪れる。住宅街に佇む3階建ての住宅兼事務所。事務所前に置く木箱が面白い。中身は端材で、通りすがりの人に木の感触を知ってほしいと無料で配るもの。ステッカーの「反原発」は、河合社長の持論。社会問題と家づくりの仕事が密接につながっている。
 社長は、私も体験したパプアニューギニアのツアーにも参加し、熱帯雨林伐採の現状を見た。先日のバスツアーでは、その様子を語り、外材を使う建設業界の矛盾を怒った。
 パプアからの風が、ここ東京中野区に吹く。

社会派工務店のルポ公開

 

7/毎月、8日に行われる「八日会」。夜7時より2時間ほど、河合工務店1階の事務室に関係業者のメンバーが一堂に会する。進行中の仕事の課題や問題点など、ざっくぱらんに話し合う。河合社長の奥さんが用意したお茶とお菓子をつまみながら、お酒は抜き。仕事とは別の社会貢献事業もこの場で議論する。
 4月8日の八日会で、河合社長は、東日本大震災の被災者支援を提案。「自分たちに何か支援ができないかを考えている。これまでもチャリティバザーや新潟中越地震支援も行ったてきた。中野区のサンプラザに問い合わせたところ、9月頃、無償でスペースが借りられるそうだ。何をやればいいか」。

意見し、学び、確認する

 

8/八日会に出席する限り、メンバーは意見を言わなければならない。「被災地の人を呼んで、物産展をやるのもいい」などの具体案も出る。次の会まで各自提案を持ち寄ることになる。
 その後、リフォームの際、建て主に対してしてはいけない行動をドラマ仕立てで解説したビデオを見る。時間に遅れ、許可なくトイレを使い、資材を勝手に置く傍若無人のリフォーム業者に「これはないだろう!」と苦笑する。施主の心理とは何かを、ベデランたちが改めて勉強。
 河合稔氏が、高校卒業の新人大工が入社したことを伝える。「みなさんでどんどん声をかけて、叱って育ててほしい」と、暖かいまなざし。

粋な現場

 

9/工務店の姿勢は、現場にはっきり表れる。ゴミが散乱する、片付いていない工務店は間違いなくひどい所。河合工務店の現場は、建て主の心をぐっとつかむ。心遣いはもちろん、遊び心さえあり、粋。

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