繁殖している「宇宙」

 

雑誌漫遊10/ 

 

「科学絵本雑誌」といってもよい

『ニュートン』(ニュートンプレス)は、

イラストを漫然と眺めているだけで楽しい。

 

2016年3月号は、表紙裏ページに掲載していた

日本ガイシという会社の広告に笑ってしまった。

空気入れのノズルを割りばしで固定して、

そこに水を注ぎ、糸巻き付け、手でゴシゴシ回せば、

中の水が沸騰する、と解説している。

 

これが科学(技術)の原点なのだ、きっと。

何の役にも立たなさそうな発見やアイデアを

全身全霊で楽しむことから、

人間の英知は基礎づけられる。

 

本号の特集は、浮世離れもはなはだしいテーマで

「宇宙空間が膨張するとは、どういう意味か」。

 

上図の佐藤勝彦博士が1982年に発表した

「宇宙の多重発生の理論」で、眩暈がしてくる。

いろんな莫大なモノとコトをはてしなく覆った宇宙自身が、

いとも気楽にポコポコと子宇宙や孫宇宙を

生み増やしてるという。

 

こんなアホらしいほどの壮大さを思うなら、

人は自分の苦悩など、

ノズルで沸騰してしまう微量の水のように、

ちっぽけではかないものに感じるだろう。

 

小学生の段階で「宇宙」について

たっぷり教えることを訴えたい。

その後の人生が、しのぎやすくなるから。

 

 

 

 

 

 


白鳥の舞

 

雑誌漫遊9/

 

ベースボール・マガジン社の『ボウリング・マガジン』。

 

表紙を飾るのは、ボウリング界のマドンナ・大石奈緒だ。

玉を放り投げた後の決めポーズだが、

まるでバレリーナのよう。

 

玉のコントロールを制し、得点を上げる

「正しいフォーム」は、素人が見ても

「きれいだなぁ」と思えるのは不思議である。

理にかなっていることは美しい。

 

紙面は、当然「いかにして勝つか」が

多く解説されている。

 

「レンコンに文句を言った時点で、負けている」の

記事を読む。

レンコンは、レーンのコンディションのこと。

ここでは、競技者が自分の調子が悪いことを、

レーンの状態に責任転嫁することをいましめている。

第一、日本のボウリング場のレーンは、

アメリカよりもメンテナンスが行き届いている。

砂漠地帯にあるセンターは、アプローチに砂粒がある

ことも珍しくないそうだ。

つまり、ボウリングは、メンタルで勝てとのこと。

 

 

 

 

 


エゴ芸術家の生贄にならず

 

友人らと、両国の劇場シアターXにて

イプセンの未完作『スヴァンヒルド』を観る。

ノルウェー・オスロから来たグルソムヘテン劇団の前衛劇だ。

 

舞台は、やはりオスローにあるブルジョワジー・ハルム夫人の庭。

詩人ファルク取り巻く紳士淑女が詩やケームに興じる、

優雅な集いが繰り広げられる。

ああ、ヨーロッパ人…と思う。

俳優女優の動き、佇まいが、いちいち絵になって美しい。

 

上は、後半の一シーン。

詩人ファルクは、想い人のスヴァンヒルドに、

「己の美の女神になって奉仕してくれ」と迫る。

 

ここでなぜか、眤叱太郎と智恵子を思い出す。

『智恵子抄』は傑作だが、

毎日顔を突き合わす嫁さんをミューズに仕立てる筆致は、

よく考えれば異様である。

それが苦しくて、生身の女性・智恵子は

狂ったのではないか。

 

幸いスヴァンヒルドは、賢明にもファルクを拒んだ

(こんな腹立つプロポーズを受ける女性はあまりいないだろうが)。

若き日のイプセンは、ここまで書いて、

「なんか違うよなぁ…」と思ったのかもしれない。

後年、『人形の家』で女性の自立をテーマにするわけだし。

 

ラスト、登場人物の紳士淑女10人が、

庭の周囲を外向きに囲む、ウオウオ〜っと叫ぶ。

何か人間の自由をジワジワ締め付けてくる

いやな破壊的な不条理に対して抗っているよう。

ヨーロッパをどん底に落とす第一次世界対戦は、

イプセンが死んで8年目に勃発。

 

 

 


ノリノリおりがみ

 

雑誌漫遊8/

 

『月刊 おりがみ』(日本おりがみ協会)の2016年6月号。

特集は、ブラジルでのW杯開催を記念して、

「ブラジルを折ろう!」。

だから表紙タイトルは、「オレ、オレ、6月!」。

編集者の撥ねた気持ちが伝わってくる。

おりがみも、踊るレビューガールで、白いビキニがリアル。

 

パラパラめくると、おりがみとは、何でも描ける

「立体絵」のようなものだと思う。

ただ筆のように自在ではなく、

ここうなればああなるか、というパズル的要素が、

面倒くさくも夢中にさせる。

 

三角折りの基本形からの「新オリガミツリー」は、

生命の分岐図のよう。

折る手順と生物の進化は、何となく似てるなぁ。

 

国際交流基金でコンゴ・ベナンに派遣された

折紙講師の報告が載っている。

子どもたちに受けたようだ。

異国の天才が、異国流のおりがみを発達させれば、

さぞかし変なものが出てきて、面白かろう。

 

 


おじさん雑誌の今

 

雑誌漫遊7/

 

勤め人の時、同僚と昼飯の後に入る喫茶店で、

置いてある週刊誌を、気がなくパラパラと繰ったもの。

『サンデー毎日』(毎日新聞社)もその一冊。

 

2016年7月31日号の特集は、あの都知事選だ。

そのうち2Pが、元編集長・鳥越俊太郎のヨイショ記事。

サブ特集は、「名医が断言! 私が受けたい「がん手術」」。

「がん政策」を掲げる鳥越を援護射撃してるのだろう。

身内びいきは当然だが、記者の方のモチベーションはどうなのか。

 

亡くなった永六輔を偲ぶ友人の記事が良かった。

帝国ホテルでジーンズがダメといわれ、

その場でジーンズを脱いだとか。

 

綾小路きみまろ、マツコデラックスのそれぞれの対談、

全国240大学実就職率ランキングとか、

芸能ネタ、身近ネタもバランスよく入っている。

今号で一番の傑作は、

アナウンサー、カトパンこと加藤綾子が微笑む表紙。

まさに、おじさん、パパ好みの誌面づくりである。

 

ただ、改めてネタを眺めると、

ターゲット層は、60歳70歳の団塊の世代へと

ずれこんでいるのかなとも思う。

40代前は、もう仕事の合間に雑誌なんか読まない。

スマホで、メールチェクしたり、ヤフーニュースでも

見るだろうし。

 

 


驚異的な「アイデア辞典」

 

雑誌漫遊6/

 

30代40代の主婦向けの雑誌『Mart』(光文社)。

2015年12月の特集は、

「出すもの・しまうもの キッチン大調査!」で、

情報量がすさまじい。

 

キッチン雑貨は、プロっぽい雰囲気の「シルバー鍋」が

おススメで、いままでの不満を解消する

新しい「三角コーナー」のアイデアは新発明目白押し。

調理具は「見せたいツール」として吊るすことを提案。

キッチン雑貨のストックは隙間に隠すことも手だけど、

粉類はびん・ボトルに移して「見せる」ことで

生活感を消しちゃう!

 

その他の記事もボリューミー。

料理では、「うちのぎょうざもっと食べたくなるアレンジ」。

オススメMartファッションは、

「カーキとキャメルのガウチョの足元をどうするか?」がテーマ。

子どもと「ゆるいリンク」の新しいお揃いスタイルも検討すべしで、

「美容系グミサプリ」で美と健康を保ちましょう。

 

これだけのアイデアと情報を盛り込んで月刊とは。

辞典のようで、一冊で1年は過ごせそうだが。

 

 


コテコテ保守

 

雑誌漫遊5/

 

ふだんはまず読まない

保守系の雑誌『正論』(産経新聞社)。

「保守史家のW巨頭対談!安倍談話懇談会…」

「大東亜戦争は無謀ではなかった」

「終戦時の陸相・阿南惟幾」など、

それらしきタイトルが目白押し。

保守はやはり、「あの戦争は…」を基軸とした

国家論の論壇だなぁと思う。

 

新鮮な記事もある。

この頃、テレビ番組やネットで

保守系学者をバサバサ一刀両断にしている

美人の国際政治学者・三浦璃麗氏が面白い。

「オバマ外交の終焉と大統領選」では、

共和党支持州の保守層の厚い

南西部を見とかないと分からないよ、と指摘。

日本の米国通の大半の解説は、ニューヨーク州や

カルフォルニア州など典型的な民主党支持州の

動向に基づいているから、

情勢をよく分析できてないとする。

 

時々「保守」という枠で、

国内外を見る必要はあり。

 

 


キャベツのあらがい

 

植物研究/

 

『ファーブル植物記』より、

野生のキャベツは、上のように大洋に面した、

風の吹きさらす崖の上に自生しているという。

どぎつい緑色で、辛く、強烈な匂いがするそうだ。

 

食卓にのる球のキャベツは改良型となる。

どのように改良されたかは書いていないが、

なんだか人の手というのは、空恐ろしく思えてくる。

 

縦に生えていたものを、玉ねぎ状に

折りたたみ巻き巻きしいてしまうのだから。

キャベツにとっては、

どんな拷問的な、また先祖伝来の姿を奪う

屈辱的なことが行われてきたことだろう。

 

われわれの前でキャベツは瑞々しく、

マヨネーズにまみれている。

しかしこの人間に手なづけられた栄養満点の野菜は、

密かに夢見るはずだ。

海風に颯爽と向かい立つ己の雄姿を。

 


プラモ文化、健在!

 

雑誌漫遊4/

 

プラモデルの雑誌『MODEL ART』。

今年は創刊50周年となる。

 

この2016年5月号の特集は、

「空自最後?の有人偵察機」。

自衛隊では偵察機は無人化していくのか。

本号誌面は、戦闘機のプラモデルがメインとなるが、

もちろん戦車、巡洋艦からミサイルを運ぶトラックもあり。

高級車セドリック、バイクなんかも差し込んでいる。

「日本機大図鑑」のコーナーでは、

古機のプロペラを紹介してマニアック。

 

自分はプラモ好きでもなんでもないが、

やはり戦闘機・戦車の模型を眺めていると、

妙に心がときめいてくる。この精緻さがたまらない。

男は、戦争する乗り物や武器に対して本能的に

共感してしまう生き物か。

 

戦争道具の本質は、脳みそ怪獣のプラモ

「マーズ・アタック」のセリフが端的に示している。

「ごちゃごちゃいう奴にゃレーザー銃が火を噴くぜ!」だ。

問答無用で相手を叩きのめし、従わせる利器である。

それを象ったプラモづくりは、

男の秘められた暴力性と支配欲を

微温的に愉しむ行為かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 


バンド・デシネ!

 

雑誌漫遊3/

 

『芸術新潮』で「バンド・デシネ(BD)」の特集をやっていた。

BDとは、フランス語圏内のマンガで、

母国では「第9の芸術」として評価が高まっている。

特色は、絵のレベルが異様に高く、一コマ一コマが

まさにアート作品。リアルかつ色彩が美しい。

建築も風景もかっちり仕上がった、まさに映画。

1ページ1週間の製作時間がかかる凝り様である。

 

日本のマンガ家・大友克洋が、BDの大ファンで、

あの緻密な作風は、これをヒントにしている。

特集では、大友のお気に入りの作家たちを紹介。

 

彼はインタビューに答えて、

BDがますます個性豊かになる一方、

日本のマンガがどんどん画一化していることを嘆いている。

 

たしかに、BDみたいな贅沢なつくり方では、

ペースの早い日本では食っていくのが大変。

OTOMOマンガは、すごい。

 

 

 

 

 

 

 

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